Amazon賠償命令に見る模倣品対策の現状と限界

Amazon賠償命令が示したもの

先日、アマゾンジャパンに対して約3,500万円の損害賠償を命じる判決が東京地方裁判所から下された、というニュースが報じられました。

訴えを起こしていたのは、神戸市の医療機器メーカー「トライアンドイー」と、その販売代理店である「エクセルプラン」です。両社が正規に販売していた血中酸素濃度測定器(パルスオキシメーター)の偽造品が、アマゾンの「相乗り」出品機能を通じて正規品のページに紛れて販売され、売上が著しく損なわれたことが問題となりました。

引用:Amazon

ECにおける模倣品の問題は以前から指摘されていましたが、プラットフォーム事業者の責任が問われた点で、今回の判決は実務上も示唆に富むものといえます。

模倣品対策ツールの現状と限界

実はこのニュースの約10日前、私どもはアマゾン社が主催する「Amazon Brand Protectionセミナー2025」を聴講する機会がありました。そこでは、ブランド保護のためのさまざまなツールが紹介されていました。

例えば、

・Brand Registry(ブランド登録)

・Transparency(シリアルコードによる真贋判定)

・Project Zero(権利者自身による削除機能)

といった制度が整備されており、アマゾンとしても模倣品対策を強化していることがうかがえます。

しかし、今回の事案が示すように、こうした制度が存在していても、実際の運用が追いつかなければ、十分な救済につながらない場合があります。

特に「相乗り出品」のような仕組みでは、正規品と模倣品が同一の商品ページ上で混在するリスクがあり、権利者側にとってはコントロールが難しい側面があります。

「事後対応」では不十分という現実

今回の件から得られる重要な示唆は、模倣品の問題は「起きてから対応する」だけでは不十分であるという点です。

模倣品の被害はゼロにすることは難しく、一定程度発生することを前提に考える必要があります。そのうえで重要となるのは、販売開始前の段階でどこまで対策を講じておくかという点です。

模倣品対策は「設計」で決まる

実務上は、以下のような対策を個別に講じるだけでなく、それらを組み合わせて全体として設計しておくことが重要です。

・商標や意匠の登録による権利の確保

・Amazon Brand Registryへの登録

・シリアルコードや二次元コードを用いた真贋判定の仕組みの導入

特にECにおいては、出品後に個別の削除対応を行うだけでは十分とはいえません。どのような権利を取得し、どのような仕組みで模倣品を排除していくのかという観点から、事前に対策を組み立てておくことが求められます。

ブランドと顧客を守るために

模倣品への対応は、後手に回れば回るほど被害が拡大します。だからこそ、売れる前の段階から、知財と運用の両面で対策を講じておくことが不可欠です。

一方で、消費者側にも注意が求められます。今回のように、医療機器であるにもかかわらず、正規品の10分の1程度の価格で出品されていたケースでは、「なぜそこまで安いのか」と疑問を持つことが、自身の安全を守るうえでも重要です。

特に、体に直接使用する製品や口に入る食品などについては、価格だけで判断するのではなく、販売元や商品の信頼性を確認する意識が今後ますます重要になるでしょう。

まとめ

今回の事案は、プラットフォーム側の責任だけでなく、事業者自身がどのように模倣品対策を講じるべきかを改めて考えさせるものです。

ブランドを守るためには、「問題が起きた後の対応」ではなく、「問題が起きる前の設計」が重要です。知財の取得と運用を一体として捉え、事業に組み込んでいくことが、結果としてブランドと顧客の双方を守ることにつながります。

鈴木 徳子

株式会社ブランシェ 代表/弁理士(弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所)

ウォルト・ディズニー・ジャパンにてキャラクターライセンス業務に従事。現在は、株式会社ブランシェにおいて企業のIP戦略・ブランド構築支援を行うとともに、弁理士として特許・商標等の権利化業務にも携わる。キャラクタービジネスや海外展開を見据えた知財戦略の立案を強みとする。

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