キャラクターIPを育てるには、ストーリーや世界観が重要だといわれています。しかし、必ずしもストーリーだけが人気の理由ではありません。
その一例が、英国の玩具メーカーRMS Internationalが展開する「Mystery Squishy Dumplings(ミステリー・スクイッシー・ダンプリングス)」です。
この商品の魅力は、何が出てくるかわからない「ミステリー性」、開封する瞬間のワクワク感、そして、ぷにゅぷにゅとした触り心地のよさとキャラクターの可愛らしさにあります。
箱を開けるまで中身がわからないため、購入者が実際に商品を開けて、何が出てきたかを紹介する「開封動画」も楽しみの一つです。こうした動画はSNSで共有されやすく、商品の人気が広がるきっかけにもなりました。
一方で、人気商品には模倣品や安全性の問題もつきまといます。韓国で、一部のスクイーズ玩具などから基準を超える有害物質が検出されたこともニュースになりました。
このような玩具は、一過性のブームで終わる可能性もあります。実は、2017年ごろ、スクイーズは一度ブームになりました。その後人気が落ち着き、近年再度注目されるようになりました。
今回注目したいのは、RMSがスクイーズ玩具の人気を一時的なブームで終わらせず、衣料品や生活雑貨へのライセンス展開を通じて、キャラクターIPとして育てようとしている点です。2026年10月、RMSはBioworldとのライセンス契約により、英国・欧州で衣料品、バッグ、靴、生活雑貨などへの商品展開を発表しました。
さらに日本でも、2026年10月6日、株式会社Kamiwaza-JapanがRMSの日本総輸入・販売元となり、「Dumpling Squishy」をはじめとする商品の国内展開を進めることが発表されています。
単なる流行の玩具から、日常生活の中で親しまれるキャラクターIPへと成長させようとする動きは注目に値すると思います。
キャラクタービジネスでは、最初から壮大なストーリーや幅広い商品展開を用意する必要はないのかもしれません。
まずはSNSや玩具でファンの反応を確かめ、人気の理由を見極めたうえで、ライセンス商品を段階的に広げていく。これも有効なキャラクターIP戦略の一つだと思います。
もっとも、スクイーズ玩具の魅力である「ぷにゅぷにゅとした触り心地」や「開ける楽しさ」がなくなっても、キャラクターそのものが消費者に支持されるのか。そこが、今後のブランド展開の鍵になるのではないでしょうか。
今後、日本市場でも人気が広がるのか。そして、一時的なブームを超えて、長く愛されるキャラクターブランドとして定着できるのか。引き続き注目していきたいと思います。
鈴木 徳子
株式会社ブランシェ 代表/弁理士(弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所)
ウォルト・ディズニー・ジャパンにてキャラクターライセンス業務に従事。現在は、株式会社ブランシェにおいて企業のIP戦略・ブランド構築支援を行うとともに、弁理士として特許・商標等の権利化業務にも携わる。キャラクタービジネスや海外展開を見据えた知財戦略の立案を強みとする。

