サンリオ分析③|商品化権契約の本質

本記事は「サンリオ分析シリーズ」の第3回です。

キャラクターはどのように収益を生むのか

前回は、サンリオの商標出願の分析を通じて、同社のビジネスが物販中心から体験・コンテンツ型へと広がっていることを整理しました。

もっとも、キャラクタービジネスは、商標等の知的財産権を取得するだけでは成立しません。

それらをどのように商品・サービスに展開し、収益につなげていくかが重要になります。

そこで本稿ではライセンスの構造に着目し、実務の観点から整理してみたいと思います。

キャラクターは、それ単体で存在しているだけでは収益を生みません。文具、アパレル、雑貨といった商品として展開されるだけでなく、企業の広告物や販促活動に活用されることで、初めて消費者との接点が生まれ、価値が顕在化します。

例えば、最近ではキャラクターを販促活動に活用している金融機関を目にする機会も増えています。こうした取組は、お堅いイメージの金融機関を身近なものとして感じてもらううえで、一定の役割を果たしていると考えられます。

なぜライセンスという仕組みが使われるのか

すべての商品をキャラクターの権利者が自ら製造・販売することは現実的ではありません。そのため、キャラクタービジネスでは、外部の企業に商品化を許諾する「ライセンス」の仕組みが用いられます。

この仕組みにより、キャラクターの権利者は、第三者による商品展開を通じてライセンス収入を得ることができます。こうしたビジネスモデルは、ウォルト・ディズニーによって確立されたものとして知られています。

私自身も、このビジネスモデルに触れたことが、知的財産の分野に進むきっかけの一つとなりました。

商品化権とは何か

ところで、キャラクターのライセンス契約は、通常「商品化権許諾契約」と呼ばれます。ここでいう「商品化権」という言葉は実務上広く用いられているものの、法律上明確に定義された権利ではありません。

実際には、著作権、商標権、意匠権など、複数の知的財産権が組み合わさって構成されています。

その中でも中心となるのは、キャラクターの態様(表現)に関する著作権です。

一方で、キャラクターの名称等は商標権、キャラクターを付した商品の形状等については意匠権によって保護することが通常です。

商品化権許諾契約は、著作権や商標権など複数の権利を前提として、それらを整理したうえで第三者による利用を可能にするものです。実務上は、これらの権利の帰属や利用範囲をどのように定めるのかが重要なポイントとなります。

商品化権許諾契約の本質

商品化権許諾契約の本質は、キャラクターを拡張しながらブランド価値を維持するための仕組みと捉えることができます。

キャラクタービジネスは、ライセンスによって拡張される一方で、管理を誤るとブランド価値が毀損されるリスクも伴います。そのため、キャラクターを拡張しつつ、適切にコントロールするための枠組みが必要となります。

キャラクターの権利者(ライセンサー)には、ロイヤルティを得る対価として、そのブランド価値を維持する責任を負うといえます。一方で、ライセンシーにとっても、ブランド価値の維持は、自社商品の信頼性や販売力に直結する重要な要素となります。

品質管理が持つ意味

上記の商品化権許諾契約の本質を踏まえると、品質管理は極めて重要な要素となります。

キャラクタービジネスは、ライセンスにより市場を拡大できる一方で、不適切な商品や低品質な商品が流通した場合には、ブランド価値を大きく毀損するリスクを伴います。

そのため実務上は、酒類や風俗関連など社会的影響が懸念される商品については、そもそも許諾対象から除外するとともに、ライセンサーが商品サンプル、パッケージ、販売促進資料等について事前承認を義務付けるなど、ブランド価値を維持するための管理体制が採られています。

これらは単なる形式的なチェックではなく、ブランド毀損を防止するための重要な運用と考えられます。

まとめ:拡張と統制を両立する仕組み

本稿では、キャラクタービジネスにおけるライセンスの構造について整理しました。

キャラクターは、商品やサービスを通じて市場に展開されることで価値を生みますが、その拡張はライセンスという仕組みによって実現されています。

もっとも、ライセンスによる拡張は、同時にブランド価値毀損のリスクも伴います。
そのため、商品化権許諾契約においては、品質管理を通じた適切なコントロールが不可欠となります。

すなわち、商品化権許諾契約とは、キャラクターの拡張とブランド価値の維持という相反し得る要素を両立させるための、実務上の中核的な仕組みであるといえます。

鈴木 徳子

株式会社ブランシェ 代表/弁理士(弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所)

ウォルト・ディズニー・ジャパンにてキャラクターライセンス業務に従事。現在は、株式会社ブランシェにおいて企業のIP戦略・ブランド構築支援を行うとともに、弁理士として特許・商標等の権利化業務にも携わる。キャラクタービジネスや海外展開を見据えた知財戦略の立案を強みとする。サンリオ分析③|商品化権契約の本質

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