知財戦略シリーズ②|知財戦略はどう設計するか ― 事業をコントロールする視点

本記事は「知財戦略シリーズ」の第2回です。

知財戦略の設計と知財ミックスの考え方

前回は、知財戦略の全体像について説明しました。

本稿では、実務において知財戦略をどのように設計していくかについて整理します。

実務では、特許だけで製品やサービスを守ることはほとんどありません。

技術は特許、デザインは意匠、ブランドは商標、コンテンツは著作権といったように、複数の知的財産を組み合わせて保護していきます。

このように、複数の知財を組み合わせて全体として設計する考え方を「知財ミックス」といいます。

重要なのは、「特許」「商標」といった縦割りで考えるのではなく、事業や製品がどのように模倣されるかを前提に、適切に組み合わせていくことです。

模倣のされ方から逆算する

知財戦略を考える際には、「どのように真似されるか」を想定することが重要です。

実務上よく見られるのは、「特許を取得したから安心」と考えてしまうケースです。しかし実際には、技術を保護していても、デザインを変更されたり、ブランドを変えて販売されたりすることで、容易に回避されてしまうことがあります。

このように模倣は一つの側面だけでなく、複数の形で行われます。そのため、個別の権利ごとに対策を考えるのではなく、「どのように回避されるか」という視点から全体を見渡し、複数の知財を組み合わせて“抜け道をふさぐ”設計が必要となります。

知財戦略とは、「何を守るか」を考えるのではなく、「どのように回避されるか」を前提に設計するものといえます。

出願のタイミングと優先順位

知財は、思いついたときに個別に出願すればよいというものではありません。重要なのは、事業や製品の開発プロセスに合わせて、どの段階で何を保護するかを設計することです。

例えば、
・研究開発段階では、コア技術について特許取得を検討する
・製品仕様やデザインが固まる段階では、意匠登録を検討する
・ブランドやネーミングが決まる段階では、商標出願を行う

といったように、それぞれのステージに応じて適切な知財を選択していきます。

また、すべてを同時に進めることが難しい場合には、事業への影響や模倣リスクの大きさを踏まえて優先順位をつけることも重要です。

このように、知財は単発の判断ではなく、開発から市場投入までの流れの中で、一貫した設計として組み立てていく必要があります。

外部技術と契約を含めた設計

実務上よく問題となるのは、「技術は使えているが、権利が押さえられていない」という状況です。例えば、共同研究やライセンス契約の内容によっては、改良技術の権利が自社に帰属しない、あるいは自由に事業展開できないといった制約が生じることがあります。

このような場合、せっかく事業として展開できる技術を有していても、後から権利関係が障害となり、事業の自由度が大きく制限されてしまうことになります。

そのため、外部技術を活用する場合には、単に技術を導入するだけでなく、
・権利の帰属
・ライセンス条件
・改良技術の扱い
といった契約条件を含めて設計しておくことが不可欠です。

知財戦略とは、特許の取得だけでなく、こうした契約関係を含めて、事業としてどこまでコントロールできるかを設計することにほかなりません。

まとめ ― 知財戦略は事業全体の設計である

知財戦略は、「特許を取るかどうか」といった個別の判断の積み重ねではありません。

  • どの権利を組み合わせるか
  • どのタイミングで出願するか
  • どこまで権利化し、どこを秘匿するか

これらを事業全体の中で整理し、一貫した設計として組み立てていくことが重要です。

また、知財戦略は、技術や権利の問題にとどまらず、契約や事業スキームを含めて、どこまで事業をコントロールできるかという視点とも密接に関わります。

そのため、知財は「何を守るか」を考えるものではなく、「どのように事業を守り、伸ばすか」を前提に設計するものといえます。

知財をコストで終わらせるのではなく、事業の成長に結びつけるための設計が、これからの知財戦略においてますます重要になります。

ご関心がございましたらお気軽にご相談ください。

高松 孝行

株式会社ブランシェ 代表/弁理士(弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所)

国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)にて、最先端技術のライセンス交渉・事業化支援に従事。その後、スタートアップ支援や資金調達支援、ライセンス交渉等に携わる。現在は、株式会社ブランシェにおいて、技術を起点とした事業設計や知財戦略の立案を支援するとともに、弁理士として特許を中心とした権利化・係争業務にも従事。技術とビジネスを接続する実務に強みを有する。

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