サンリオ分析②|商標出願から読み解くブランド戦略

本記事は「サンリオ分析シリーズ」の第2回です。

商標から見えるサンリオの戦略転換

前回は、サンリオの業績の伸びについて整理しましたが、キャラクタービジネスはキャラクターそのものを基盤とするビジネスであり、キャラクターは重要な知的財産(IP)です。したがって、それをどのように守るかが非常に重要になります。

キャラクタービジネスを支える中核的なIPは、著作権と商標権です。

もっとも、商標権は著作権と異なり、登録されて初めて発生する権利であり、権利の取り方や範囲を外部からでもある程度確認することができます。

今回は、そうした点も踏まえて、商標の観点から見てみたいと思います。

出願件数の集中が示すもの

サンリオは2020年に社長交代があり、業績がV字回復しました。そこで2020年から2025年までの同社の国内の商標(出願中及び登録済の商標)を調べてみました。

下記の表は、2020年1月1日から2025年12月31日までの商標件数(出願中及び登録済の商標)を各年度別にまとめたものです。商標の合計件数は1463件です。

 

年度別商標件数(2020年から2025年)

件数
2020504
2021423
2022242
202398
202467
2025129

合計 1463件

合計件数1463件のうち、2020年から2021年の2年間で927件と、全体の6割以上を占めています。

このことから、サンリオはこの時期に集中的に商標出願を行い、ブランドの再構築を図っていたと考えられます。

なお、この時期は、サンリオのIP戦略の転換期にあたり、SNSなどのデジタルコンテンツの配信が強化された時期とも重なっていると考えられます。

区分構成から読み取れるビジネスモデル

次に、2020年から2025年の商標について、主な区分別件数および年平均件数を整理しました。比較のため、2015年から2019年の統計もあわせて示します。下記の表をご参照下さい。

サンリオの区分別商標件数の比較(2020年から2025年と2015年から2019年)

区分2020年から2025年 件数年平均件数2015年から2019年 件数年平均件数
9類3015026853
16類3585941282
18類3295438977
21類2964936573
24類3325540180
25類2704535270
28類3155237675
35類2383919839
41類2894822144
42類1963218236
43類2123517635
44類120209819

まず、IP戦略の転換があった2020年から2025年までの期間の数字を分析してみます。

最も件数が多いのは、文具・印刷物(書籍など)に該当する第16類であり、これに布製品の第24類、バッグ等の第18類が続きます。

この分布から、サンリオは比較的単価の低い日常的な商品を中心にブランド接点を広げていることがうかがえます。キャラクター商品は、こうした日常的な商品を通じて初めて接点を持つケースが多く、ブランドへの入口として機能しています。そのため、これらの分野における商標の保護は、単なる権利確保にとどまらず、ブランド戦略そのものといえます。

デジタルと周辺商品への広がり

特徴的なのは、デジタル(プログラムを含む)関連の第9類の件数が多い点です。

もっとも、指定商品の内容を見ると、単なるプログラムにとどまらず、ストラップなどのスマートフォンアクセサリーといった周辺商品も含まれており、デジタルコンテンツを楽しむと同時に、身近にアクセサリーなどの形でキャラクターが存在するような環境を意識した展開が行われていることがうかがえます。

体験・サービス領域への拡張

さらに、サンリオは体験を通じたファンの獲得にも重点を置いていると考えられますが、その点は商標の取り方にも表れています。イベントやコンテンツ配信サービスに関する第41類、カフェ・宿泊サービスの第43類、美容・健康サービスの第44類にも一定数の出願が見られる点は興味深いです。

これらの区分にまで商標を広げていることから、単なる商品販売にとどまらず、「体験」を含めたブランド展開を意識していることが読み取れます。これは近年のキャラクタービジネスにおける重要な変化の一つといえます。

物販から体験・コンテンツへのシフト

2015年から2019年までの期間と比較すると、2020年から2025年までの期間は商品関連の区分(第16類、第18類、第24類など)はいずれも減少している一方で、第41類(配信・イベント)や第35類(小売)などのサービス関連の区分は維持または増加しており、サンリオのビジネスが物販中心から体験・コンテンツ型へとシフトしていることがうかがえます。

商標の区分構成の変化は、単なる権利取得の結果ではなく、ビジネスモデルの変化そのものを反映しているといえます。実務でも、区分や指定商品・役務の決定は容易ではなく、将来のビジネス展開を見据えて設計する必要があります。

その意味で、商標の出願内容は、企業の将来戦略を反映したものといえます。

まとめ:商標は戦略を映す

ここまで見てきたように、商標の出願内容は、企業の将来戦略を反映したものといえます。

区分や指定商品・役務の設計は容易ではなく、将来のビジネス展開を見据えて検討する必要があります。

キャラクタービジネスにおいては、商標だけでなく著作権や商品化契約など、複数の権利が組み合わさってビジネスが成り立っています。これらについては、次回以降で整理したいと思います。

鈴木 徳子
株式会社ブランシェ 代表/弁理士(弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所)

ウォルト・ディズニー・ジャパンにてキャラクターライセンス業務に従事。現在は、株式会社ブランシェにおいて企業のIP戦略・ブランド構築支援を行うとともに、弁理士として特許・商標等の権利化業務にも携わる。キャラクタービジネスや海外展開を見据えた知財戦略の立案を強みとする。

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