知財はコストなのかという疑問
知的財産に詳しくない方から、「お金がかかるけれど、特許を取得する意味はあるのか」といったご質問をいただくことがあります。
実際に、ある経営者の方からは、「知財はコストセンターであり、できるだけ費用は抑えたい」というお話を伺ったこともあります。
このように、知財を“コスト”として捉える見方は少なくありません。
一般的に語られる特許のメリット
こうした考え方に対して、一般的には以下のようなメリットが挙げられます。
- 特許を取得することで技術を一定期間独占できる
- 特許権をライセンスすることで収益を得ることができる
- 技術力の証明となり、金融機関からの評価につながる
いずれも間違いではありません。
しかし、こうした説明だけでは、特許に馴染みのない方にとっては、いまひとつ実感を持ちにくいのも事実です。
特許と収益性の関係
実際のところ、特許を保有している企業は、そうでない企業と比較して、売上高営業利益率が高いという調査結果があります。
特許を保有している企業の売上高営業利益率は約3.5%であるのに対し、保有していない企業は約1.8%とされており、その差は1.7%にのぼります。
(平成25年度 中小企業等知財支援施策検討分析事業報告書)
もちろん、この差は単純に「特許を取ったから利益が上がる」というものではありません。
他社が容易に模倣できない技術を有し、それを適切に事業に組み込んでいることが前提にあります。
しかし、その前提を支えているのが、特許という仕組みであることもまた事実です。
知財は「活用してこそ意味がある」
ここで重要なのは、特許は「取得すること」自体が目的ではないという点です。
知財は、活用してこそ意味があります。
例えば、
- 自社の製品やサービスの差別化に活用する
- 競合他社の参入を抑制する
- 共同開発やライセンス交渉において交渉材料とする
さらに、中小企業においては、特許出願や特許取得そのものが、プロモーションとして機能するという側面もあります。
例えば、「特許出願中」「特許取得」といった表示は、技術力や独自性のアピールにつながり、営業活動や資金調達の場面においてプラスに働くことがあります。
このように、知財は単に権利として保有するだけでなく、対外的な信用やブランドの形成にも寄与するものです。
知財はコストではなく投資であり、その価値は設計で決まる
このように考えると、知財は単なるコストではありません。確かに、出願や維持には費用がかかりますが、それは将来の事業を支えるための先行投資と捉えることができます。
逆に言えば、活用されない知財はコストにとどまりますが、適切に活用される知財は、事業の競争力を高める“投資”となります。
特許を取得する意味は、「権利を持つこと」そのものにあるのではなく、「それをどのように活用するか」にあります。
知財はコストとして扱われがちですが、事業の中で活かすことで、競争優位を生み出す重要な経営資源となります。その意味で、知財はコストではなく、投資として捉えるべきものといえるでしょう。
知財を「コスト」で終わらせるか、「投資」として活かすかは、設計次第で大きく変わります。事業における知財の位置づけや活用の方向性についても、お気軽にご相談ください。
高松 孝行
株式会社ブランシェ 代表/弁理士(弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所)
国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)にて、最先端技術のライセンス交渉・事業化支援に従事。その後、スタートアップ支援や資金調達支援、ライセンス交渉等に携わる。現在は、株式会社ブランシェにおいて、技術を起点とした事業設計や知財戦略の立案を支援するとともに、弁理士として特許を中心とした権利化・係争業務にも従事。技術とビジネスを接続する実務に強みを有する。
