ヒト型ロボット開発の進展
先日、中国でヒト型ロボットの運動会が開催され、二足歩行ロボットが格闘技やグループダンスを披露したというニュースが話題となりました。人間に近い動きを実現するロボット技術は、近年急速に進展しています。
ASIMOが切り開いた技術領域
二足歩行ロボットと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、HONDAが開発したASIMOではないでしょうか。1986年に開発が開始され、長年にわたり改良が重ねられたこのロボットは、日本の技術力の象徴ともいえる存在でした。
当時は、二足歩行ロボットの実現はまだ遠い未来の技術と考えられていましたが、その後の技術の進展により、現在では二足歩行ロボットは世界的に広く開発されています。
その意味で、ASIMOはこの分野における一つのブレークスルーとなり、後続の技術開発に影響を与えた存在といえます。こうした先行的な技術開発は、その後の特許の蓄積や技術領域の形成にも影響を与える可能性があります。
二足歩行という 技術選択
ここでASIMOについて興味深いのは、二足歩行という技術選択そのものです。単に「移動」を目的とするのであれば、安定性や効率の面から四足歩行や車輪型の方が合理的と考えられます。それにもかかわらず、日本では二足歩行に強いこだわりを持って開発が進められてきました。
難易度の高い領域と知財戦略
この点は、単なる技術的選択にとどまらず、知財戦略の観点からも示唆に富むものといえます。すなわち、難易度の高い領域に取り組むことで、他社が容易に参入しにくい技術領域が形成され、その周辺で特許が蓄積されていく可能性があります。
中国の出願動向と知財の取り方
一方で、ヒト型ロボットに関する特許出願数については、中国が大きな存在感を示しています。この点については、中国が国として知財の確保・活用に非常に力を入れていることも背景にあると考えられ、関連技術を含めて広範囲に出願が行われている傾向が見られます。
技術開発と知財の関係
こうした出願動向は、技術開発と知財の関係を考える上で興味深い示唆を与えます。すなわち、個々の技術の完成度に加え、どの領域をどのように知財として確保していくかという視点が、将来の事業展開に影響を与える可能性があるという点です。
このように、同じヒト型ロボットという分野であっても、技術へのアプローチや知財の取り方には様々な方向性があり得ます。
日本型ものづくりと差別化戦略
実際に、弊社のクライアントにおいても、特定の技術領域に焦点を当て、その完成度や精度を高めることにより差別化を図るアプローチが見られます。このような開発姿勢は、日本のものづくりにおいて伝統的に重視されてきた方向性とも重なるものといえるでしょう。
研究開発段階からの知財設計
技術開発においては「何を作るか」だけでなく、その技術のどの部分を特許として押さえるのかをあらかじめ検討しておくことが重要です。コア技術に加えて、その応用や周辺領域についても権利化を検討することで、他社の参入を防ぐことにつながります。
こうした視点を研究開発の段階から取り入れることが、事業競争力の確保につながるといえます。
今後の展望と知財の重要性
ヒト型ロボットの分野は、今後、介護や災害対応などさまざまな分野での活用が期待されています。その中で、どの企業が優位性を確保していくのかは、技術そのものに加え、どのように知財を取得・活用していくかにも大きく左右されると考えられます。
まとめ ― 技術と知財は一体で考える
研究開発段階からの知財の組み立てについては、個別の技術内容や事業計画に応じた検討が重要となります。ご関心がございましたら、お気軽にご相談ください。
高松 孝行
株式会社ブランシェ 代表/弁理士(弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所)
国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)にて、最先端技術のライセンス交渉・事業化支援に従事。その後、スタートアップ支援や資金調達支援、ライセンス交渉等に携わる。現在は、株式会社ブランシェにおいて、技術を起点とした事業設計や知財戦略の立案を支援するとともに、弁理士として特許を中心とした権利化・係争業務にも従事。技術とビジネスを接続する実務に強みを有する。
