先日、英Creation RightsとIProtectが、コンテンツの制作・承認履歴と、インターネット上の模倣品や無断利用の監視を結び付ける提携を発表しました。Creation Rightsが「どのコンテンツを、誰が、どのような権限で公開したか」を管理し、IProtectがECサイトやSNSなどを監視します。疑わしい利用が見つかった場合は、人が確認したうえで対応する仕組みです。
この発表で興味深いのは、模倣を見つけるための監視と、正規のコンテンツを管理する仕組みをつなげたことです。
キャラクターは、一つの完成画像だけで使われるわけではありません。表情や衣装の異なる画像、SNS用の動画、グッズ用のデザインなど、展開に合わせて多くの素材が作られます。複数の制作会社やライセンシーが関われば、「これは公式に承認された画像か」「この会社にはどの用途まで許諾したか」を後から確認する必要も生じます。
プログラムのCVSとの共通点と違い
この仕組みを知ったとき、私はプログラム開発で使われるCVSのようなバージョン管理システムに似ていると思いました。CVSは、いつ、誰が、どのファイルを変更したかを記録し、過去の版を確認できる仕組みです。キャラクターについても、原案から修正版、承認済みの画像まで履歴を残す点は共通しています。
ただし、キャラクターの管理では、どの画像を誰が使ってよいかまで把握する必要があります。たとえば、日本向けの商品に使うため、キャラクターが浴衣を着た画像を制作したとします。その画像を国内の商品に使用することは許諾していても、海外の広告に使うことまでは認めていない場合があります。制作履歴に加えて、その画像を誰が、どこで、何に使えるのかも記録するところが、CVSとの違いだと感じました。
模倣を発見した後にも役立つ
ECサイトでキャラクターを使った商品を見つけたとき、外見だけでは、無断利用なのか、過去に許諾した正規商品なのか、すぐには判断できないことがあります。
承認済みの画像と許諾範囲を確認できれば、見つかった商品と照らし合わせやすくなります。今回の提携は、「何が正規の利用か」という内部の記録を、外部で見つかった利用の確認に役立てる取り組みといえます。
海外で権利を主張するためにも
制作履歴は、海外で権利を主張する際にも役立つ可能性があります。たとえば台湾には、現在、著作権の登録制度がありません。著作権は創作によって生じますが、権利をめぐる争いになれば、誰が、いつ、どのように制作したかを示す資料が重要になります。台湾の知的財産局も、創作過程や権利に関する資料の保存を勧めています。
専用システムがなくても、まずは原案や修正版に日付を付け、承認済みの画像を明確にし、制作を依頼した際の契約や許諾条件と一緒に保管することから始められます。
キャラクターを育てていくと、画像も利用先も増えていきます。そのときに「どの画像が正規版で、誰がどこまで使えるのか」を説明できることは、ライセンスを円滑に進めるうえでも、模倣品に対応するうえでも大切です。制作から利用までの記録を残すことが、キャラクターを安心して展開するための土台になると感じました。
参考資料:Creation RightsとIProtectの提携発表(Licensing International、2026年10月15日)
鈴木 徳子
株式会社ブランシェ 代表/弁理士(弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所)
ウォルト・ディズニー・ジャパンにてキャラクターライセンス業務に従事。現在は、株式会社ブランシェにおいて企業のIP戦略・ブランド構築支援を行うとともに、弁理士として特許・商標等の権利化業務にも携わる。キャラクタービジネスや海外展開を見据えた知財戦略の立案を強みとする。

