愛媛の「紅プリンセス」流出報道から考える品種保護の難しさ

いま、巷でニュースになっている愛媛県の新品種「紅プリンセス」が中国で栽培されている可能性があるとの報道を見て、品種保護の難しさを改めて感じました。

報道によれば、愛媛県は中国でも品種登録を出願しているとのことです。海外で権利を取得することは重要ですが、果樹品種の場合、権利取得だけで流出を防げるわけではありません。

特に果樹は路地栽培されることが多く、厳格な管理体制を構築したとしても、苗木や枝の持ち出しを完全に防ぐことは容易ではありません。仮に枝等が何らかの形で国外へ持ち出された場合、事後的にその流出経路を特定することは容易ではありません。

一度国外へ流出してしまうと増殖も比較的容易であり、品種登録制度は「流出を防ぐ制度」というよりも、「流出後に権利行使を可能にする制度」といった側面が強いように思います。

私自身、過去にスペインのオレンジ品種の日本における品種登録案件に関与したことがあります。その際は、苗木の輸入手続、植物検疫への対応、検疫施設への立会いなどを行い、日本国内に正式に持ち込める状態になるまで1年以上を要しました。

植物は、特許や商標と異なり、情報ではありませんので、国境を越えて移動させる点で難しさがあります。

一方で、近年は国によっては既存のDUS(区別性・均一性・安定性)試験データを活用できる場合もあります。現在、日本で品種登録されている果樹品種について、ペルーでの品種登録案件に関わっていますが、日本で取得済みのDUSデータを利用して手続を進めることができ、現物の植物体を送付する必要がなく、ほっとしています。

品種登録は、商標や特許と比べて実務に携わる専門家も少なく、農業、植物学、国際制度、知的財産が交差する特殊な分野です。

今回の紅プリンセスの報道は、日本の優れた新品種を守ることの難しさを改めて示しているように感じます。果樹のように一度流出すると増殖が容易な品種については、権利取得後の対応だけでなく、そもそも流出させない仕組みをどのように構築するのかが今後の大きな課題となるでしょう。

鈴木 徳子

株式会社ブランシェ 代表/弁理士(弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所)

ウォルト・ディズニー・ジャパンにてキャラクターライセンス業務に従事。現在は、株式会社ブランシェにおいて企業のIP戦略・ブランド構築支援を行うとともに、弁理士として特許・商標等の権利化業務にも携わる。キャラクタービジネスや海外展開を見据えた知財戦略の立案を強みとする。

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